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もの凄く遅れたうえあまり誕生日関係ないような……うわああ
一度没にした方も、誕生日関係ない小説としてきちんと書きたいです。だいぶ書き終わりかけていたので……
サイトをすっきりさせたいですあとログまとめたいです……
日記にあげるばっかりでごめんなさい追記から一応グラハム誕生日小説(もどき)のようなものです








九月に入ってから、雨が長く続いていた。
綺麗に晴れ渡るということがなく、雨がやんでいた時すら空にはいつも雲が立ちこめていた。
曇天の空を飛ぶ事が嫌な訳ではないが、晴れ渡る空の中を飛べることにこしたことはない。
グラハムはそう思い浮かべながら、ぼんやりと泥の様な雨が窓に吹き付ける外を見回していた。



二人でカタギリの部屋まで歩く最中に、雨に降られた。慌てて走ってみたはいいものの、強い雨足に結局お互いずぶぬれになってカタギリの部屋のドアの前にたどり着く事になったのだ。
カタギリが有無を言わさず無理矢理浴室に押し込まれたグラハムは、濡れて冷たくなった服を脱ぎ捨てて先にシャワーをあびると、タオル一枚を腰に巻いただけの格好で浴室を出た。

「あがったぞ」
そんな格好でわしわしと頭をタオルで乱暴に拭くグラハムの姿に、テーブルの前についてなにかをいじっていたカタギリは一瞬だけ目を見開いて声をこぼしたけれど、それをすぐにいつもの温和な笑みに変えて立ち上がる。
「呼んでくれたら着替えもすぐに渡してあげられたのに……それにバスローブだってあっただろう?」
そういいながらカタギリは濡れた髪に手をさしのべて、跳ねる髪の先をつまんで微笑んだ。
「別に私は君の前ならこの格好でうろついてもかまわないがね」
「君いつから裸族になったんだい? ……いいから服を持ってくるから、少しだけ待って」
そう言い残して寝室へと消えた背中を見おくりながらやはり髪を拭きながらカタギリが机の上に広げていたものをのぞき込む。ただの白い紙が何枚か、そのかたわらに白い紙がくしゃくしゃと丸められたものが転がり、隣にはそれをまた紙で包んだ様なまるでキノコの様なものが転がっていた。
電話をしているカタギリが退屈半分に手遊びで作ったのだろうか、何となくでそれを見つめていた。
すっかり彼のタンスを占領する様になっているグラハムの服を片手にカタギリが戻ってくると、机の上のもろもろをじっと見つめるグラハムを見てふと表情をゆるませて微笑んだ。

「なんだこのキノコは」
「失敬な、キノコじゃないよ……」
カタギリは言いながら、タオルを巻くだけのグラハムに服を手渡した。
カタギリがキノコの様なものの根元に紐を通すのを、服を受け取ったままの姿で見つめる。キノコの様だった紙の塊に紐をつけて、ぎゅっと握られていた様なところをスカート状に広げる。転がしていたペンをとったカタギリは、丸く紙をつつんだぶぶんに何やら書き込み始めた。

「出来た」
「…………首つりの現場か何かか」
「いちいちひどいことを言うね君は……これはええと、おまじないの人形らしいよ。てるてるぼうず、だって。おじさんが昔教えてくれたんだ」
立ち上がって頭でっかちの幽霊の様な、しかもどこか情けない笑顔をうかべた小さな幽霊を窓際にかけながらカタギリは言った。
「なんの由来があるんだ、そのミスターてるてる氏には」
「天気を良くして欲しいときに彼を窓の近くに吊るすんだ。そうすると雨をあがらせてくれるんだって」
君が最近いつもすねているから、けど僕に出来る事は残念ながらこれぐらいしかないからね、と言いながら、カタギリは笑顔を浮かべてみせた。

「それじゃあそろそろ僕もシャワーを浴びてくるよ」
「あ、ああ」

結局タオルを巻いたままの姿でカタギリが浴室に消えるのを見届けることになった。
ちらりとカタギリが雨がやむ様にとつり下げた何度見てもやはり気の抜ける様な顔をした紙の人形を見る。今一度それを見てみれば、どこかカタギリの笑顔に見えなくもない、そう思いながら、グラハムは思わず一人で笑いをこぼしていた。




カタギリが浴室から出て長い髪の水分をタオルで取りながらリビングに向かうと、しっかりと服を着たグラハムはソファに座り込んだままうつらうつらと頭を揺らしていた。起こしてしまうのが憚られて、極力音を立てない様にしてそちらに近づいてから、ふと視界に入るものがあった。
窓際につり下げられていた彼が「首つり」と称した人形が、いつの間にか対をなしていた。自分が作ったはずのものよりもずいぶんと大きな頭を持ったやけに自信のありそうな笑顔をしたそれを見て、どこかグラハムがちらついてしかたがなくて、気付いたら思わず笑顔が浮かんでいた。

「……む、カタギリ、髪をしっかり拭かないと君は大惨事になるぞ」
そう言ってバスローブのすそを引くグラハムに、カタギリは眉を少し下げて笑ってみせてから、ソファの上でいつの間にか目を覚ましていたグラハムの隣に腰掛けた。
嬉しそうに濡れて束にまとまった髪に手を伸ばしながら、グラハムは当たり前の様にカタギリが首にかけていたタオルを奪うと、丁寧にふきはじめた。
「……ありがとう」
「君が頭を鳥の巣の様にして四苦八苦していた姿を知っているからな。ベッドに行く前にはきちんと乾かさなければ……ドライヤーを借りるぞ」
「……おまかせするよ」
ドライヤーを取りに向かおうと立ち上がりかけたグラハムは、ふと何かを思い出した様にその中途半端に立ち上がった姿勢のまま先ほどまで髪を握っていた相手の顔をじっと見つめた。それを見上げたカタギリと目が合うと、そのまま触れるだけの口づけを落としてからドライヤーを取りに立ち上がった。













翌日、目を覚まさせたのはカーテンを引く音だった。突然入って来た光に、一度ぎゅっと目を閉じてしまってからそろそろと目を開くと、まだ眠そうな表情をしたカタギリが、裸の背中に髪を流したまま振り返った。
「……見て、晴れたよ」
早朝の光を背中に受けながら満足げに笑う表情を見て、つられる様に笑みを浮かべる。カタギリの後ろに広がる窓の外には、昨日までの重苦しい灰色の雲の姿は一つも見えなくなっていた。
逆光で見にくくなった姿は白い光に縁取られ、どこか普段のカタギリではない様な、そう思わせる程だった。
「これで君が気持ちよく飛べるだろう? もう拗ねなくていいんだよ」
カタギリが、非科学とくくってしまうのはどこか寂しいな、僕らしくもないことを言ってるけれど、そうつぶやくのを聞いてベッドの中でそれに頷きながら、何故か急にいつも以上にカタギリが愛おしく思えてたまらなくて、グラハムはベッドから降りると窓際のカタギリの輪郭を確かめる様になぞってから、思い切り抱き締めた。



























「今年は君に二倍のお祝いをしてあげるよ誕生日二年分、ね」
九月に入ってすぐ、カタギリは真新しい制服に身を包んだまま言った。軍服はどこか薄いカタギリの体を際立たせるだけな様な気もしていたが、本人が気にしていなさそうならば触らない方がいいだろう。
「……何故?」
自分もカタギリと同じ形の制服を着ながら問うた。そう言ってみせれば、彼はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりのわざとらしく残念そうな表情を作ると大げさな身振りまでつけて言った。
「だって、君と恋人になってからはじめての誕生日、してあげられてない! 君隠してるんだもん、一ヶ月後にそれを知った僕の気持ちがわかるかい? その時言いだせただろうかと思うかい?」
「隠していたつもりはなかったのだが……君を不快にさせたなら謝ろう」
「不快ではなかったけれど、ただ残念だった、それだけさ!あと今さらになってだけど、僕が埋め合わせをしたいだけさ」
「…………いや、埋め合わせは必要ない。きちんとプレゼントをあの時貰ったさ」
「え?」
「君に、何より美しい青空を貰ったのを、私はしっかりと覚えている」
一瞬きょとんとした顔をしたカタギリは、恥ずかしげに破顔すると少し歪んだ口でこぼした。
「……あれは別にプレゼントにはならないじゃないか」
「何を言うんだ、青空の下でのフライトを贈ってくれただなんてプレゼント以外の何ものでもないだろう!」
そんなつもりじゃあなかったから、カウントに入らない、などとつぶやくカタギリに思わず笑みと共に息を漏らしてから言った。
「ならば一日君を好きにさせてくれればいい」
「それは駄目じゃないかな? むしろ反則じゃない? そんなのいつもと変わらないじゃないか」
「そうか……。……そうか?」
「そうだよ、そんな事に君が自分で気付いていないなんて、なんてひどいことだろう!」
また大げさな仕草で言うのには、きっと今度のものには照れ隠しも入っているのだろう。にやにやとしながら、それは悪かった、と言ってみせれば、カタギリはじっとりとした目でこちらを見た。
「とにかく、欲しいものを決めておいておくれよ。サプライズを用意する気力はないけれど、欲しいものさえ言ってくれれば僕は全力をつくすから」
「……わかった、考えておこう」
「期限は十日当日までだからね!」

そう言い残して新型の機体の方へと大股で去って行く様子を見送る。
欲しいもの、これ以上欲しいものはないというものを、今、与えられている。
飛行する事を、空を、可能性を、隣にいる何よりも近しい存在を、これ以上何を望めばいいというのだろうか!
きっと、キス一つが欲しい、と、心からの言葉を伝えてみてもカタギリはきっとそれでは駄目だと言うだろう。彼に送るものを考えるよりも大変だ、そう思いながら、もやもやと考えを浮かばせるばかりだった。

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